2011年2月23日水曜日

「大人の事情」が社会の進歩を妨げる?

人間に与えられた時間は一日24時間と短い。しかし一方で社会は複雑になるばかりだ。毎日高度になる人間社会の進歩は、分業化を産み、そして豊かな社会の屋台骨になる。例えばこうやってパソコンを使って文書を打っていても、実際CPUの中身がどうなっているかは詳しくは知らないし、電車に乗っていてもどういう発電システムによって電源を得て動いているかも、詳しいところは正直わからない。

でも実際、パソコンを使えば、海外の人とテレビ電話だってできるし、動画も世界中に配信できちゃったりする。
電車も毎日、何万人の人々を運んでいる。

さて、ここであなたがとてもすごい発明品を開発したとしよう。例えば、不老不死のクスリとか。

しかし、一方で、この社会では健康産業というやつが大流行である。その不老不死のクスリがもし開発されたら、病院も健康診断も薬業界も手術も、あるいはお墓すらも必要なくなるとしよう。

そうするとどうなるだろうか。

おそらくそこで起こるのは「あのクスリは実はトンデモなもので、まったく効果がないんですよ」とか「実は人体実験で試されているけれども、効果なんか全然なくって人を欺す詐欺師の薬なんですよ」という評判がおそらく立ってくることだろう。
そうでも言わないと、実は仕事を失ってしまう人たちが、専門家の立場を利用してデマを流すからだ。

これを真に受けると、素人は「わ。やっぱり怖いんだ。夢はやっぱり夢なんだな」などと思ってしまう。

で、本当にそれを真に受けた人がいっぱいいると、仮にすばらしいアイディアとかすばらしい発明品でも、世間からは抹殺されてしまう。つまり、いきなりブレークスルーを持つ新商品が開発されたとしても、まずはそういう「駆逐されるべき仕事についている人たち」によって、その情報は封殺されてしまうのだ。高度な社会の分業制においては、大人の事情が社会の進歩を妨げることもあり得る。

で、証拠を見せろ、とかなんとか騒ぎになり、逐一学会で作用機序(プロセス)を発表するなりして、その不老不死になるまでの仕組みが人々に浸透するまでは、その薬は使われないということになるが、一方、一部社会の大多数を先んじる形で、何でも信じちゃう人たちとか、マルチ商法の人たちとか、社会では「カモ」と呼ばれるはずの人たちが先に恩恵にあずかる、というのはあり得るのかもしれない。

逆説的ではあるが、何でもダマされるカモのはずである人たちが、社会から完全にいなくならないのは、こういうプロセスが働いているのかな、と思った。

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